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第4章: "運命の出会い"

彼女が28階の部屋で期待に胸を膨らませている同じ時刻に、澤田暁も24階 の部屋で一人外を見つめていた…・澤田暁、独身、32歳、米国大手証券会社 のトップ証券アナリストである。日本の一流大学を卒業後米国のハーバードで MBAを取得、現在米国のトップ企業で証券アナリストとして活躍している。 今回は日本支社での打合せの為訪日しており、ここ全日空赤坂ホテルに昨日よ り滞在していた。仕事も全て順調に終え、これからの4日間は東京でのんびり 過ごし、来週(月)にニューヨークの方に戻るつもりであった。彼はニューヨ ークのいわゆるアッパーと呼ばれる高級住宅街、そう古くはあのジョンレノン が、最近だと坂本龍一が住んでいるといえばわかるだろう、その高級アパート に居を構えていた。独身、高年収、まさにアメリカンドリームを絵に描いたよ うなそんな男であった。しかし、そういうバックグラウンドとは裏腹に、彼は 非常に人間味あふれる性格、個性を有していた。特に、女性に対して男性は常 に優しく、大きな心で包んであげなければならない、女性に涙など絶対流させ てはならない、そんなポリシーを常に持っていたのである。それではなぜ32 歳にもなってまだ独身なのか…それは、全て彼の仕事が原因だった。証券アナ リスト、24時間昼夜問わず世界経済の動向に常にアンテナを張って働かなけ ればならない。そんな彼の仕事が多くの恋愛のチャンスを奪っていったのであ る。先週も、彼は、一人の女性から、彼としては結婚を真剣に考えていた相手 から、別れを言い渡されたばかりだった。原因はもちろん、デート中でも携帯 で呼び出され、昼も夜も2人の時間が満足に持てない…そんな不満がとうとう 彼女に彼との別離を決意させる結果となってしまった。そんな心に傷を負った ばかりの日本への出張…・彼の心には…誰か、心優しい女性に出会い、この心 の傷を癒すとともに、本当の彼の気持ちを理解してくれる、そんな女性に出会 いたい、そういう気持ちでいっぱいだった。彼は、身長185cm、体重80 kg、中学から大学までの10年間サッカーで鍛え上げた肉体、今も週に2回 はジムに通い汗を流している。ゴルフ、テニス、スキーとスポーツも万能であ る。又、ほどよく日焼けした顔に光る精悍な、だが優しさを持った目、端正な 顔つき…・恐らく彼の職業、年収を知らなくとも彼の外見だけでほとんどの女 性は彼に好意を持つだろう、そんな男であった。澤田はとにかくちょっと街に 出てみようと思い、部屋を出てエレベータホールの方に向った…・同じ頃、あ ゆみも部屋を出てエレベータに…・ 彼女が28階で下りのエレベータに乗る…・幸い他の乗客は誰もいなかった。 "さあ、どこに行こうかしら。でも、もうそろそろ日も暮れて…・今日はいくら なんでも誰かとお食事なんて無理よね…ちょっと寂しいけど一人で食べよう…" そんな時エレベータが24階で止まった。澤田が一人エレベータの前に立って いた…・ 「あっ…」 澤田の口から思わず驚きの声が出た…・ "綺麗な女性だ…一見派手だけど、何かすごく優しさ、地味さを秘めているよう な… 何なのだろう、この気持ちは…・" 一方あゆみも澤田にいきなり会って…・ "…・素敵な方…・でも、私じゃ無理無理…だめよ、あゆみ、そんな初日から欲 を出しちゃ…" 澤田はあゆみに軽く会釈をするとエレベータに乗りこんだ…・ "この人、一人なのだろうか…でも、こんなに綺麗で可愛い人が一人で泊まって いるわけ無いか…・" 一方あゆみは…・ "何かスポーツしているのね、きっと…すごく立派な体格しているし…それと… 何かすごく真面目な、紳士的な感じが…・うらやましいわ、こんな人の彼女に なれる人…・ あれ…?…・また、私、変な事考えて…・あゆみは女性が好きなはずなのに… 変だわ…・" 彼女の心の中に、あの夢の世界がまた広がってきたのであった…・ エレベータはゆっくりと下に向っている…・・ "よし、とにかくダメ元で夕食にでも誘ってみるか…・" 澤田は意を決したように、ごくんと唾を飲み込むとあゆみに向って声をかけた… 「あの…すみません」 "えっ…?何…・?" 「は、はい…・?」 「あの…今日は…お一人でこちらにお泊りですか…?…いえ、実は私、ニューヨ ークの方から仕事で来てまして、今日仕事も終わって…・これから食事でもと思 っていたのですが…一人で食べてもおいしくないですし…・もし、ご迷惑でなか ったら一緒に夕食つきあって頂けたらと…・いや、本当に図々しい話で、それも 突然で…・すみません。ご予定あるんでしたら遠慮無く言って頂いて構わないで すから…・」 ”う、うそでしょ…・?こんな素敵な方から食事の誘いなんて…・でも、彼、す ごく真面目で優しそうで…・そんな人を騙すなんて…・きっと、私の事女性だと 信じているし…どうしよう…・" 「はい…・あの…・」 「いえ…本当に無理だったら…すみません…」 "だめ、あゆみ、勇気を出して…" 「い、いえ…・私は…構いませんが…本当に私でよろしいんですか…・?」 「は、はい…本当にいいんですか…?…僕は本当に幸せ者です。それじゃ行きま しょう」 "そう、誰にも男性という事言えないんだから…別に食事をするだけだし…・元々 この旅行は4日間あゆみで過ごすのが目的なんだから…いいわよね…" 「は、はい…・」 澤田とあゆみの乗ったエレベータは1階に到着した。2人はロビーを通って、玄 関の方に向う。澤田はレンタカーを借りていた…・白のBMW、コンパーティブル である。ドアマンに事前に連絡しておいたらしく車は既に玄関に用意されていた。 「さあ、どうぞ乗ってください…・」 「わーっ…素敵な車ですね…・はい」 ”私、こんな車乗るの初めて…・あゆみになって男の人とドライブなんて…ちょ っとドキドキ" 「さあ、何を食べますか?…あっ、その前にお名前をお伺いしてもよろしいです か?私は、澤田、澤田暁(あきら)、暁はあかつきと書きます。」 「わ、私は…水島、水島あゆみです…・ひらがなで、あゆみ、です。 宜しくお願いします…」 "澤田暁さん…素敵なお名前…" 「あゆみさん…・素敵な、綺麗なお名前ですね…・それじゃ、あゆみさん、何が 食べたいですか?遠慮無く言ってください」 「はい、でも、私は何でも…・それより、あ、暁さんは米国にお住まいだから… 日本でのつかのまのお休みなんでしょ?是非暁さんのお好きな物でもどうぞ…・」 「有難う…そうですね、じゃあ、しゃぶしゃぶでいいですか?ちょっとお洒落な、 おいしい店を知ってますので…」 「はい、私もしゃぶしゃぶ大好きです・・・・」 「わかりました。それでは行きましょう」 澤田は車をスタートさせた。心地よいエンジン音がひとみの耳に響いてきた…・ 車は、首都高速からレインボーブリッジに入った…もう外は暗くなってきており、 美しい夜景があゆみの目に飛び込んできた…・ "綺麗…・すごく綺麗…・あゆみ、幸せ…・初日からこんな素敵な方と、そして 素敵な車で素晴らしい夜景をバックにドライブ出来るなんて…・でも…ちょっと 怖い…もし、 あゆみが男性である事がばれてしまったら…" そんな彼女の不安を和らげるかのように、ラジオからはマイルスのバラードが流 れていた…・切ないまでの、リリシズムを唄うトランペットの音色が彼女の耳に 届いてくる… 車はお台場にあるホテルに滑り込んだ…・・


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