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第三章 再会

二年生になると私はバスケット部を退部してしまいました。もともと運動神経 が良くなく練習にもついて行けなかったのです。私だけが新入部員と一緒に練 習をさせられることにも絶えれませんでした。しかし、私が退部した本当の理 由は飯田キャプテンが居なくなったことと、他の先輩の私を馬鹿にしたような 態度に絶えれなかったからです。 いくら練習をしても上達しないどころか、新入部員よりもだらしのない私を見 ては、あからさまに不快な顔をするのです。私はその顔を見る度に惨めになる のでした。そして私はバスケット部を辞めることにしたのです。 家庭教師だった涼子先生との秘め事も終わってしまいました。先生は大学を卒 業し、故郷の戻り会社に就職することとなったのです。先生の御陰で学力だけ はクラスの中ではトップクラスに戻っていました。私は倶楽部活動を辞めた時 間を学業にあて勉学に励んだのです。 涼子先生から学んだのは勉強だけではありませんでした。女の子としての生活 もコッソリと続けていました。マスターベーションをする時も、そこには女の 子の私が存在していたのです。 そして何事も無く、「あっ」と言う間に中学生活は終わったのでした。 高校は自宅から15分電車で行ったK市にある進学高校でした。この高校は自 分で言うのもなんなんですが全国で有名な進学校で私の中学校からは私と斎藤 郁美の二人だけが通うこととなったのです。 彼女は私と違ってバスケット部も3年の一学期まで続け、成績もトップクラス でしたから頭が下がります。 「やっと試験も終わったわね」 「あぁ、今日はぐっすり寝るぞぅ!」 「そんなに勉強をしていたんだ?」 「郁美と違って僕は天才じゃないからね」 「そんな(笑)、でも勉強だけじゃ人生おもしろくないじゃない」 「それはそうだけど・・・」 「ミサは夏休みどうするの?」 郁美は中学校時代から、さすがにミサ子とは呼ばないが二人きりの時は僕をミ サと呼んでいました。 「どうするって?」 「美穂や里香と旅行に行かないかって話しをしているんだぁ」 「へ〜、いいなぁ」 「ミサも行かない?」 「僕が?」 「そう」 「女の子ばかりなんだろ?」 「誰も気にしないって、笑」 「それって僕を男として見ていないってこと?・・・確かに自信はないけど」 「あはは、なんだか嬉しそうじゃん。それにたとえ襲われたって腕力でも勝て るわよ。笑」 「・・・・・・・・・・・」 確かに身長こそ私の方が少し高かったのですが体重は郁美の方があるように見 えます。なによりもスポーツをしていた郁美は私より体力があることは確かだ たのです。 「でも、お金も無いし・・」 「私だってないわよ。バイトするのよ」 「そうなんだ?」 「ファーストフードで募集していたから一緒にやらない?」 「う〜ん・・・・・・・・」 「決まりね!明日一緒に行きましょう」 「あぁ・・」 結局、翌日、郁美と私はバイトの面接を受ける為、ファーストフードに行くこ ととなったのでした。
「困まったなぁ、調理要員はもう募集していないんだよ」 「そうなんですか」 私は次の日、郁美と一緒にバーガーショップに出かけていました。郁美はレジ カウンターを私は調理でバイトをしようと思っていたのです。 「レジカウンターだったらまだ空きがあるんだが?」 「それでも良いんじゃない?」 郁美が私に促します。 「・・・・・・・」 「別にスカートを穿いて、レジをするんじゃないんだから良いじゃない」 「えっ?そうなの?」 「うん?もしかして・・・それで悩んでたの。笑」 「大丈夫ですよ。男性の制服もありますから、笑」 私の顔は真っ赤になっていたと思います。店長も郁美も私が女装してレジカウ ンターに立つ姿を想像したに違いなかったからです。 「じゃ、お願いします」 「何ならスカートでバイトするかい?笑」 「いえ、結構です。」 「じゃ、明日の午後1時に来て下さい。細かい説明をしますから」 「はい」 「はい」
「お待たせしました。フィシュバーガセットとアップルパイです」 「いらっしゃいませ。注文はお決りでしょうか?」 「えっと〜」 「チーズバーガセットにアイスコーヒーを下さい」 「コーヒーはお砂糖にミルクをお付けしますか?」 「ミルクだけ」 「こちらでお召し上がりですか?」 「はい」 「かしこまりました。」 「・・・・」 「チーズバーガセットのアイスコーヒーのミルク付きをお一つ。540円にな ります。お先にお会計をよろしいでしょうか?」 「・・・・」 「少々お待ち下さい・・・・・・・・・・・・チーズバーガ入ります!」 「お次のお客様・・・・・」 「もしかして、ミサちゃん?」 「えっ?・・・・涼子先生・・・」 「ここでアルバイトしているの?」 「はい」 「そうなのぉ、頑張ってるわね」 「はい」 「今、忙しそうね。」 「あっ、あと30分でバイトの時間が終わりますが」 「そう?じゃ・・ゆっくり食べて待ってるわ」 「はい。ご注文をお願いします」 二年ぶりに逢った涼子先生はすっかり奇麗になっていました。私に勉強を教え ていた頃は大学生だったこともあって、どちらかと言うとチャーミングな感じ だったのですが、今日の涼子先生は大人の女って感じだったのです。 「田舎に帰ったんですよね。」 「うん、今、夏休みなの。久しぶりに大学時代の友達と逢うことになって出て 来たのよ。」 「そうなんですか」 「ところで、ミサちゃん少しは身長伸びた?」 「痛いところを突きますね。これでも少しだけ伸びたんですよ。みんなはどん どん伸びるけど僕はもう伸びないのかなぁ」 「そうなんだぁ。でも、伸びない方が嬉しかったりして?笑」 「先生には嘘をつけないですよね」 「うん。ミサちゃんの秘密を握ってるからね」 「そんなぁ・・・・・」 「あはは、心配しなくても大丈夫よ。これでも口は固い方なんだから」 「よかった」 「今はもう普通の男の子してるの?」 「・・・・」 「正直に言いなさい!」 「たまに・・・両親のいない時に・・・・・」 「そうなんだ。でも回りに理解のある人がいると良いんだけどね」 「いいですよ」 「お待たせ!」 着替えを終えた郁美が来たのです。 「彼女?」 「そんなんじゃありません!」 「あはは、はじめまして。ミサちゃん、あっ及川君の家庭教師をしていた水野 涼子です」 「及川君とはただの友達の斎藤郁美です」 「そうなんだぁ。お友達、いろいろ教えてあげてね」 「えっ?」 郁美が何のことか判らずキョトンとしていました。 「及川君には理解のある女性の友達が必要だから」 「先生!」 私は今にも、秘め事を話すのではないかと不安になり話しを静止したのです。 「えっ?なんのこと??理解のある女友達が必要って」 「なんでもないよ」 「気になるなぁ・・・・」 「なんでもないよ」 「怪しい、もしかして・・・家庭教師だった涼子さんと・・・」 「もしかして、変な想像をしている?」 「ほら!勘違いされちゃうじゃない」 「先生が変なこと言い出すからいけないんですよ」 「もう話してしまったら?お友達なんでしょ?」 「・・・・・・」 「なになに?」 郁美は必要に聞きたがるのです。 「仕方ないわね。・・・及川君はミサちゃんなの」 「えっ?」 「女の子の格好をするのが好きなの」 私は天地がヒックリ返った思いでフラフラしてしまいました。 「なんだ。そんなことか」 「えっ?」 「もっとスゴイことだと思って期待しちゃった。笑」 「知っていたの?」 「なんとなくね。・・・・だって、仕草なんか女の子みたいだもの」 「・・・・・・・」 「そうなんだぁ。だったらよかったわ」 私は穴があったら入りたい思いでいっぱいでした。 「よかったわね。ミサちゃん」 「ミサちゃんって呼んでいたんですか?」 「えぇ、二人で逢う時は女の子として扱ってたから」 「先生!」 「お化粧もさせたりしてたもの」 「へ〜、お化粧もしていたんですか?」 「そうよ」 「僕は行きますよ」 「あらっ?怒った??」 「いいじゃない。ミサ!」 「二人して僕をエサに遊んでるんじゃないですか」 「そんなことないって!郁美さんには良き理解者になってもらわないと」 「・・・・・・・」 「あっ、待ち合わせの友達が来たわ。また、今度ゆっくりお話しましょ!」 言いたいことだけを言って、涼子さんは店を出て行ってしまったのです。 郁美と二人だけ取り残され私は気が重くなっていました。先に口を開いたのは 郁美です。 「涼子さんって面白い人ね。笑」 「あんなに口が軽い人だとは思ってもいなかったよ」 「そうかなぁ。あの人はミサのことを心配しているんじゃないの?」 「なんで?」 「私に、自分の変わりをしてほしかったんだと思う」 「変わりって?」 「だから、ミサと彼女でしていたことよ。笑」 「先生と?」 「とぼけないで細かく白状しなさい!」 この後、郁美の追求は一時間にも及んだのでした。


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