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第二章 脱毛

涼子さんに勉強を教えてもらう月曜日が待ち遠しくなっていました。実際は自 分がどうされるのかとても不安だったのですが、心の奥で何かを期待している のです。 涼子さんのマンションが近づいて来るにつれ、足が重くなってきました。 (この前の出来事は夢だったのかも知れない) そんな気さえしてきたのです。 「こんばんは」 「いらっしゃい。ミサちゃん」 やっぱり夢ではなかったのです。涼子さんは私のことを”ミサちゃん”と呼ん だのです。 「どうぞ、入って」 「はい」 部屋入ると壁に掛けられている白いワンピースが目に入りました。 「どうしたの?・・・あっ、あれね。ミサちゃんに着てもらう服よ」 「僕があの服を?」 「僕じゃないでしょ?あたし・・・って言いなさい」 「・・・・・・・」 「どうしたの?もう一度、あたし・・で言い直しなさい」 「あたし・・が、あの服を?」 「そう、昔、私が着ていた服だけど、ミサちゃんに着せようと思って出してお いたのよ。でもその前にブラジャーね。笑」 私は先日と同じように着せ替え人形と化していました。 「可愛い!」 「冷やかさないで下さい」 「本当よ!髪を伸ばしたら誰も男の子だなんて思わないわ」 口には出さなかったのですが、何故か涼子さんに誉められとても嬉しく思った のです。涼子さんは私を鏡の前に連れて行きました。 「ほら」 「・・・・」 そこには、白いワンピースを着た男の子とも女の子とも判別できない中性的な 少年が立っていたのです。
「こらっ!女の子はそんなふうに足を開かない。ちゃんと膝を揃えなさい!」 「はい、すみません」 「そう、意識しなくてもいつもそうなるよう訓練しないとね」 私は黙って頷きました。 「学校や家でも習慣になるように訓練すること」 「・・・・・・・・」 「返事は?!」 「はい」 「良い返事だわ。女の子はいつも素直に愛想よくしなきゃ駄目よ」 私は小さく頷いたのです。 「笑ってみて?」 「えっ?」 「微笑むの」 「・・・・・・」 「早くしなさい」 私は言われた通りに微笑んでみました。でもきっと顔が引きつっているように 見えたに違いありません。 「う〜ん・・・毎日、鏡で30分練習すること!次回、チェックしてあげる」 「・・・・・・」 「それに・・・問題を発見したわ。ミサちゃんスネ毛が生えて来てる」 「・・・・・・」 「スカートを穿いていて脚からスネ毛じゃみっともないわね。ちょっと待って」 そう言うと涼子さんはドレッサーからシェイビングカミソリを持って来たので す。 「これ女の子のお手入れ用だけど、剃っちゃいましょ」 「えっ、そんなことしたらみんなにバレちゃいます」 「大丈夫よ。ミサちゃんの脚なんて誰もみていないから」 「でも・・・・」 「てももなにもない!これは命令!ほれっ!!脚を出して・・・」 私は言われる通り椅子に腰掛け脚を投げ出したのです。涼子さんは丁寧に私の スネ毛を剃り出しました。 「ほら・・、無い方が奇麗じゃない」 そう言いながら涼子さんは作業を続けるのです。 「ところでミサちゃん、学校ではクラブの入っているの?」 「はい、バスケットをやっています」 「へぇ〜、スゴイわね」 「でも・・・」 「でも?」 「才能は無いみたいです。運動オンチなんです」 「あらあら・・・それだったら文科系のクラブにすればよかったのに」 「友達に誘われて入っちゃったんだす」 「そうか、一度入ると辞められないわよね」 「それに・・・」 「それに?」 「なんでもありません」 「こらっ、気になるでしょ。話しを途中で止めないで」 「すみません・・・・」 「そうか・・わかった、好きな人が居たんだ(笑)」 私の顔は真っ赤になってしまいました。 「あっ、図星ね(笑)」 私は小さく頷いた。 「どんな女の子?・・・あっ、それとも男の子?」 「そんなぁ!女の子です」 「なんだぁ・・・ミサは女の子なんだから男の子に興味を持たなきゃ」 「・・・・」 「もしかしたら、好きと言うより憧れなんじゃないの?」 「憧れ?」 「そう・・自分も、その女の子のように成りたいって・・・」 「そんなこと・・・」 私は涼子さんに憧れじゃないかと言われ混乱していました。 「よく考えてみて?男の子に格好良い人はいない?」 「・・・・・」 私の頭の中にキャプテンの飯田さんが浮かんで来ました。身長が180cm近く あって勉強も出来るスポーツマンです。 「ほらっ、いるんじゃない」 「えっ?」 「ミサの目が宙を舞っていたわよ。笑」 「そんなことないです」 「誰なの?」 「そんなんじゃないですけど・・・格好良いとうとキャプテンかなぁ」 「ほらっ、いるんじゃない」 「ちがいます。みんなそう思っていますよ」 「ライバルが多いのね」 「だから違いますって・・・」 「はい、終わり」 「えっ?」 「奇麗な脚になったわよ。スベスベ」 いつのまにか私の脚は女の子のような脚に変わっていました。 「もっとも、スネ毛は剃ると濃くなるって言われてるから一時的なモノだけど」 「・・・・」
翌日の放課後、私は自分の脚ばかり気にしていた。誰かにスネ毛が無いことを 指摘されたらどう返答しようか考えていたのです。クラブ活動は短パンを穿い ているため、良く見るとスネ毛の無いことが一目で分かってしまうのです。 「及川!」 先程から女子バスケ部のキャプテンと何やら話し込んでいた飯田キャプテンが 体育館の端に並んでタマ拾いをしていた私を手招きしていた。私はキャプテン のもとへ急いで駆け寄りました。 「はい、御呼びですか?」 「あぁ、悪いが女子部員が足りないんだ。紅白練習試合に入ってくれないか?」 「えっ?僕がですか?」 「ごめんなさいね。」 そのころ私が憧れていた女子バスケ部の小泉理恵子さんが飯田キャプテンに頼 んだようだったのです。 「及川もタマ拾いより面白いだろ?」 「・・・・・」 「じゃ、決まった。今日は小泉キャプテンの指示に従ってくれ」 「・・・・・はい」 顧問の先生は二週間の間、研修とかで留守だったのです。したがってキャプテ ンの命令は絶対でした。 「それじゃ、及川君は池田チームに入ってね」 「はい」 「及川君、頑張ってね。負けたチームはグランド10周だってさっ」 同じクラスの斎藤郁美も女子バスケ部に入っており同じチームだったのです。 「グランド10周って僕もか?」 「あたりまえでしょ!一緒に試合をするんだから」 「そんなぁ・・・」 「勝てばいいのよ。笑」 試合は私の居たチームの完敗でした。終了のホイッスルと共に小泉キャプテン の声が響きました。 「終了!負けたチームはグランド10周して後片付けをして解散のこと」 「はぁ〜」 私はヘトヘトでした。女の子のチームの中に入ってもさした活躍をするでも無 く試合の時間ずっと走り回っていたのです。 「及川君もグランドね」 小泉キャプテンは念を押すかのように私に言ったのです。 「はい・・・・」 私は他のクラブ活動をしている全校生徒の中を女子バスケ部員の負けチームの 人達とグランドを10周することになてしまったのです。 「お〜い、及川っ!ついに女に転換か?笑」 野球部に入ったクラスメイトから罵声が飛んで来ました。私は言い返す元気も 無く斎藤郁美の後を走っていました。気持ちの上では早く10周を終えてしま いたかったのですが疲れきった身体は今にも歩きだしそうです。どちらかと言 うと郁美の方が私に気を使ってゆっくり走っているようでした。 やっとのことでグランド10周を終えボールを片づけると男子バスケ部はまだ 練習をやっていました。私が再びタマ拾いの位置につくとキャプテンの飯田さ んが近づいて来たのです。 「及川、負けたんだって?情けない奴だな。女子と一緒に帰っていいよ」 「えっ?」 「聞こえなかったのか?帰れって言ったんだよ」 「でも・・まだ練習が・・・」 「女子の練習は終わったんだろ?」 「はい」 「だったら帰れ。試合に勝つまでオマエは女子と一緒に練習をしてろ」 「そんなぁ」 「ほらほら・・・」 私は仕方なく、その日は帰ることにしました。身体も疲労の限界だったのです。 その時、キャプテンは私が参加したチームが負けたことに腹を立ててそんなこ とを言ったのだと思っていたのですが、それは大きな間違いでした。 翌日も練習に出ると女子バスケの方に参加するようにキャプテンから命じられ たでした。 「でもも、なにも無い。早く行けよ」 「・・・・・・・」 私は仕方なく女子の練習に合流しました。 「及川君、今日もこっちで練習するの?」 郁美が私に話し掛けて来ました。 「あぁ、キャプテンに試合に勝つまで帰って来るなって言われてしまった」 「あらあら、笑。頑張ってね」 「こらっ!そこオシャベリしない!」 キャプテンの小泉さんがこちらを睨んでいました。 一通りの練習を終えると、昨日のように紅白に別れ練習試合をすることになっ たのです。 「今日こそは勝たないとね。笑」 郁美が話し掛けて来ました。 「あぁ、なんとか勝たないと、ずっと女子チームだよ」 「それも良いんじゃないの?笑」 「斎藤さん!」 「はい」 「以上、それじゃ・・・始めます」 小泉キャプテンが紅白のメンバーを発表していたのです。 「あれ?僕はどっちだった?」 「さぁ?呼ばれなかったんじゃ?」 「・・・・・」 「あのぉ、小泉キャプテン!僕は・・・」 「ごめんね。今日は人数足りてるから、見ていて」 「そんなぁ」 結局、顧問の先生の居ない間、ずっと私は女子バスケ部に参加させられてしま ったのでした。そのことは学校中に知れ渡ることになり、クラスの中では皆、 私のことをミサ子と呼ぶようになってしまったのです。 もちろん、このことは先生の間でも問題になったようですが、試合に勝つまで は男子バスケ部には戻らないと、私が言った事となって収まったようでした。


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