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第9章 失恋(100%)

一ヶ月が過ぎ退院の日が来ました。入院中も僕は行きつけの先生から連絡をし て頂き、通常であれば男性ホルモンを摂取するところを、女性ホルモン(ペラ ニンデポー、プロゲデポー)を投与してもらっていました。 「めぐみ、入院していて太ったんじゃないの?(笑)」 退院の手伝いに来てくれた里美が言いました。 「体重はそんなに増えてないんだけど」 「なんだか、タマがなくなって、女っぽくなったのかなぁ?」 「へへへ」 「気を付けないと、皮下脂肪がつくわよ」 「そう言えば・・・胸も大きくなったみたい」 「そこだったらいいけど、ウエストやお尻にもついてるのよ」 「うー、計ってないけど」 「ダイエットしないとヤバイかもね」 そう言って、里美は僕のウエストを摘んだのです。 「あはは、くすぐったい・・・やめてぇ、せっかく塞がった傷が・・・あは」 「じゃ、この荷物を持ってタクシー乗り場のところで待ってるから」 「うん、会計を済ませて、すぐに行くから」 結局、祐樹さんは一度もお見舞いに来てくれませんでした。 僕が会計で清算をしている時です。ロビーに祐樹さんを見かけたのです。 (会社を休んで来てくれたんだぁ) お釣りを受け取るのももどかしく、祐樹さんが何処かに行ってしまわないか目 で追っていました。入り口の受付で僕の部屋を尋ねているのでしょうか? 受付係りの女性が手振りで方向を示していました。祐樹さんを係りの女性にお 辞儀をすると歩きだしたのです。 (そっちじゃないよー) 僕はお釣りを受け取るとサイフに入れながら、祐樹さんに向かって小走りに走 りだしたのでした。 その時です、側に居た髪の長いBOAに似た女性が祐樹さんに駆け寄り、後ろ から自分の腕を祐樹さんの腕に通したのでした。僕は呼び止めようとした声と 足を同時に止めました。 「えっ?」 僕は自分の目を疑っていました。祐樹さんじゃなかったのかな?二人は寄り添 うように産婦人科病棟の方へ向かって歩いて行ったのです。 「どうかしたの?」 「えっ?」 「急に静かになっちゃって、めぐみらしくないしー」 タクシーの中で里美が話し掛けて来ました。僕は病院のロビーで見た光景を、 まるで壊れたビデオ再生機のように頭の中で繰り返し観ていたのです。 翌日、僕は祐樹さんの携帯電話に何度も電話を掛けて見ました。考えてみれば あの日、以来、祐樹さんとは一度も話しをしていなかったのです。あんなこと があったのでお互いに躊躇していたと思っていたのですが、僕の中に湧き上が る不安をどうしても消し去りたかったのでした。しかし、携帯電話は呼び出し 音すらしないのでした。僕は意を決して彼のマンションを訪れることにしまし た。 その日は、お店への出勤を遅らせてもらい、祐樹さんがマンションに戻る時間 を見計らって尋ねたのです。もし、不在であったら戻るまで待つつもりでした。 見慣れたドアの前でインターフォンを押しました。 「はい。どちら様ですか?」 祐樹さんの声を想像していた僕は意表をつかれてしまいました。女性の声がイ ンターフォンから聞こえて来たのです。 「あっ・・あのぉ、深山と申します」 「どのようなご用件でしょうか?」 「古河さんはお留守ですか?ちょっと近くまで来たもので」 「ちょっと待ってください」 僕は思わぬ展開に動転していました。 「ゴメンなさい。祐樹はまだ帰ってないのよ」 ドアを開けて、顔を見せたのは病院で見かけたBOAに似た女性でした。 「そ、お、ですか」 頭の中が白くなっていました。 「祐樹のお友達?」 「・・・・・はい」 「中に入ってお待ちになります?」 女性は祐樹さんに対して不動の立場を確保しているような余裕を僕に見せつけ たのです。 「あっ、いえ結構です」 BOAに似た女性の指には婚約指輪が光っていました。もし、僕が部屋に入っ て、この女性と二人でいるところに祐樹さんが帰って来たらどうなるのでしょ うか。そこには僕の居場所はありません。僕は逃げるように、その場を後にし たのでした。 「めぐちゃん、早かったわね。今日は遅くなるんじゃなかったの?」 「うん、でも。。思ったより早く、用事が・・・・」 僕は言葉途中で声が小さくなりました。そして、瞳からショッパイ涙が溢れ落 ちてしまったのです。 「どうしたの?」 「ううん、なんでもない」 「なんでもないのに、涙なんて出ないでしょ?」 僕は、祐樹さんに別の彼女が居たこと、彼女が妊娠したこと、すでに婚約をし ていること、全てを愛さんに打ち明けました。 「そうか、赤ちゃんが相手に出来たんじゃ、敵わないわね」 「うっう・・」 涙がなかなか止まりません。渡されたテッシュを半分は使ってしまっていまし た。 「元気を出しなさい」 「・・・・・」 「酷なようだけど、私達はどう頑張っても赤ちゃんは生めないもの」 「うん」 「祐樹さん、だって赤ちゃんが出来たって言われれば、情が移るわよ」 「本当はあたしのことの方が好きだったのかな」 「少なくとも、めぐと一緒に暮していたでしょ?」 「うん」 「きっと、過ちから・・・避妊に失敗したのかも・・・」 「・・・・、でも・・どうして他の女性と・・・」 「ここは・・・黙って身を引いた方がいいわよ」 「やっぱり、あたしには女性のモノが無いからかなー」 「どうだろ」 「愛さんは、どうして性転換(SRS)をしたんですか?」 「より、本当の女に近づきたかったからかなぁ」 「それは、あたしも・・・」 「あと、やっぱり・・その時、付き合っていた男性の為にって、思ったかも」 「そうなんだぁ。でも、祐樹さんは何も言ってくれなかったよ」 「なかなか、思っても言えないと思うわよ。めぐの事を思えば思う程、自分の  為にリスクを犯して手術しろなんて」 「わかる気がします」 「私だって、彼には言われなかったわよ。自分の意志でしたのよ。」 「そうなんですかー」 「彼、術後に喜んでくれたけど。笑」 その日は呑めないお酒を沢山呑みました。 「大丈夫かい?めぐちゃん」 久しぶりに砂田さんが、お店に来てくれました。どうやら愛さんが砂田さんに 電話をしたようでした。 「今日、あ・た・・し、失恋しちゃったんだ」 「それは、大変だったね」 「あーっ、その言い方・・・他人事だと思って」 「そんなことないって」 「いいんだ、どうせあたしは、偽者女だからねー」 自分でも酔っているのがわかっていました。もしかしたら半分は酔ったふりを していたのかも知れません。何故か砂田さんには心が許せて甘えることが出来 たのです。 「そんなことないって、めぐちゃんは、女の子だよ」 「嘘っ!オカマだと思ってるくせにー」 「だから、そんなことないって」 「じゃ、キッスして!」 「オイオイ、酔ってるぞ」 「出来ないんだー。やっぱり・・」 「・・・・」 「にゃぁー」 僕は砂田さんに抱きつき強引にキスをしました。砂田さんは僕を受け止め抱き しめてくれたのです。目に涙が浮かんで来ました。 「めぐ・・・」 愛さんが僕に声を掛けます。 「あの人・・」 涙の向こうに、ドアを開けて出て行く祐樹さんの姿があったのです。 「いいの?」 「うん」


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